システム開発の検収におけるユーザの債務
前回は東京高等裁判所における平成27年6月11日判決を例に、システムの要件定義で、ユーザがつい使ってしまいがちなNGワードをご紹介しました。「既存システムの機能の通り」「既存システムの機能を網羅・踏襲すること」…こうした言葉は結局、システムの要件を曖昧にして開発ベンダとの間に意識の齟齬を生んでしまいます。いくら優秀なベンダでも、他人の作ったシステム (同じ会社の違う担当者も含みます。) の機能や性能等の特徴を全て正確に把握してくれる確率はそう高くありません。どんなに丹念に調べても、その詳細な動作や使い勝手については理解しきれないことも多く、また、ユーザ自身も誤解している部分もあったりして、結局、前のシステムからのデグレードを起こしてしまう危険もあります。こうしたことを防ぐためには、要件を定義するとき、既存システムが持つ機能についても要件として明確に記述する必要があります。前回はそんなお話だったと思います。